とにかく面白い娯楽大作
「スパイダーマン」映画の最新作を鑑賞した。 145分という上映時間に鑑賞前は少し不安もあったが、始まってしまえば「あっ」という間だった。ショート動画を次から次へと観ているようなテンポの良さで、現代の娯楽のあり方などをぼんやり考えている間に終幕してしまう。 感想は「すごく面白い」の一言でいい気がする。久しぶりにそんな純粋な楽しさを味わえる映画を観た。
前作で人々の記憶から消えたピーターが、孤独に耐えながらヒーローとして街を守っている。そんな中、彼が捕らえた悪人たちが何者かに操られる事件が発生し、ピーター自身も体調の異変に苦しめられることになる。
トム・ホランドが演じるスパイダーマンは、これまで多様なヒーローが存在する世界で活躍してきた。そのため、歴代映画のスパイダーマンに比べると、どうしても無邪気な子供が特殊能力を得てはしゃいでいるヒーローごっこの印象が強かった。 しかし今作は、そんな彼の「大人への成長物語」としても実に味わい深い。
成長するヒーローと「孤独」の共感
少年のようだったトム・ホランドも、今作ではすっかり大人の風貌になっていた。かつての恋人や友人を見守りながら孤独に苦しむ今回の役柄に、非常にしっくりと重なる。主人公と俳優自身の成長が見事にリンクし、これまでシリーズを観続けてきたファンならずとも胸が熱くなるはずだ。 そして物語も、「ヒーローの孤独」という歴代シリーズが大切にしてきたテーマを描いてくれているのが嬉しい。
これまでの彼のスパイダーマンは、アイアンマンやドクター・ストレンジ、そして歴代のスパイダーマンたちに助けられる場面が多く、映画としては面白くても単独ヒーローとしての印象はどこか薄かった。 だが今作で、自分を忘れてしまった恋人や友人のSNSをフォローし続けるピーターの姿を見た瞬間、彼の抱える孤独に突如強い共感が芽生えた。それは、大人が成長する過程で誰もが一度は体験する寂しさそのものだ。
かつて親しかった人々と、人生の歩みとともに少しずつ疎遠になってしまった経験は誰にでもあるだろう。大人になるにつれ、誰もがずっと同じ場所にとどまり続けることはできないのだ。 今作は、そんな「大人になることの痛み」をしっかりと描いていた。アメコミ映画でこれほど深くその感覚を味わったのは、本当に久しぶりだった。
アメコミヒーローたちのドラマ性
今でこそアメコミ映画は大人気だが、アベンジャーズを中心とするマーベル作品が世界的な大ヒットを記録する前は、一般に知られているヒーローといえばスーパーマン、バットマン、そしてスパイダーマンくらいだった。
当時の『スーパーマン』や『バットマン』は、どこか重い宿命を背負わされたヒーローたちだった。 観客は彼らの葛藤や苦悩に共感し、ドラマに引き込まれながらアクションを楽しんでいたように思う。要するに、派手な映像だけでなく「人間ドラマ」の部分にも大きな見応えがあったのだ。
しかし、映像技術が飛躍的に進歩するにつれて映画は派手な戦闘シーンがメインとなり、ドラマシーンはどこか付け足しのようになって、記憶に残りづらくなってしまった。登場するヒーローが増えすぎたこともあり、感情移入しきれないのも確かだ。もちろんアクションだけでも十分楽しめるのだが、ずっと何かが物足りなかった。
だからこそ今作を観た時、「ようやくドラマに深く共感できるスパイダーマンが帰ってきた」と、嬉しくなったのだ。
ふとよぎる、過去作品と映画館の思い出
トム・ホランド演じるスパイダーマンに人間味と哀愁が宿ったことで、観ている間、ときおりトビー・マグワイア版のスパイダーマンの姿が重なって見えた。
サム・ライミ監督によるトビー・マグワイア版のスパイダーマンは、今思い返せばずいぶん暗く切ないヒーローだった。トビーのどこか危うい風貌が、特殊な力を得てしまった青年の孤独を際立たせていた。また、ピーターやMJが貧しく恵まれない境遇から抜け出そうともがく姿には、泥臭い人間味があり、やけに身近に感じられたものだ。
そうした過去作の記憶が、スクリーンに映し出される目の前の映像と重なるように蘇ってくる。
そして同時に、あのトビー版スパイダーマンを一緒に観に行った人のことも思い出した。
街の古く小さな映画館は、その日に限って珍しく混み合っていた。 もう20年以上も昔の話だ。ずっと忘れていたはずなのに。
あの人は今どこで、どうしているのだろう。

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