【落下の王国】なぜ今リバイバル?映像美と物語の深層を考察 – 総合芸術としての映画体験

映画を楽しむ
落下の王国
パンフレット

物語の面白さは語れても、”映画”としてのすごさを語るのは難しい。

それこそが、最近リバイバル公開されて話題となっている『落下の王国』を観た正直な感想です。

日本での最初の公開は2008年らしいですが、当時、劇場では鑑賞できませんでした。レンタル、あるいはテレビ放送では観ていたはずです。しかし、当時どのような印象を受けたのか全く覚えていませんでした。

実は、この映画の存在そのものを忘れていました。当時は激動の時代(同時多発テロ、リーマンショックなど)で、私も30代前半で管理職になりたて。毎日プレッシャーと忙しさに追われ、この壮大な作品を**心から理解し、感動する余裕がなかったのかもしれません。**また、家庭用テレビ画面のサイズでは、映像の迫力もそがれていたのでしょう。

ただ、全く印象に残っていなかったわけではありません。

十数年前に小栗旬さんが桃太郎にふんするペプシのCMを観た際、強烈な既視感がありました。その正体が何なのかは分からないまま忘れていましたが、今回その壮大な映像美を鑑賞し、**「ああ、あの時の既視感はこれだったのか」**と腑に落ちる瞬間がありました。年齢を重ねると様々な情報が時間差で重なり「ああ、そうなんだ」と思える瞬間が増えて、人生が少し楽しくなります。

🎬 【総合芸術としての映像美】映画「落下の王国」の真髄

この映画は単にストーリーを語るだけの作品ではありません。映画館の大画面と迫力ある音響がなければ鑑賞してはならない、と言わんばかりに撮られた、映画でしか表現できない芸術となっています。

特に作中で語られる物語の映像にその要素が凝縮されています。

物語は、支配者に大切な何かを奪われた者たちの復讐譚。冒険やロマンスを絡めながら語られます。映し出される背景は広大で美しく、神秘的な自然や歴史的建造物が、物語に伝説的な雰囲気を与えています。避けられない宿命がゆっくりと迫りくる予感を、荘厳な音楽は醸し出しています。世界遺産やベートーベンを効果的に利用しすぎているので、ずるいとさえ思えてきます。

登場する人物たちは、美術監督の石岡瑛子がデザインした原色ベースの民族衣装風コスチュームをまとっています。衣装をなびかせて動く姿は、まるで天野喜孝のファンタジーアート世界を実写化映像したかのようだとさえ感じます。記号的で強烈な色彩の衣装は、広大な背景の中で、登場人物を小さな存在として描写しても個々の存在を認識させる助けになっています。

映画館の大画面と大音響を生かすために綿密に映像が作られており、迫力や勢いで押し切るようなところが全くありません。しかし、そのような圧倒される映像に対し、映画内で語られる物語自体は、どこかありふれたものだったりもします。

👧 【物語の力】現実と虚構が交錯する感動のラスト

この映画は、腕を怪我をして入院している少女アレクサンドリアの物語です。

病院で偶然出会った青年ロイが、彼女に即興の物語を語って聞かせます。壮大な映像は、話を聞く少女が思い描く世界であると同時に、ハリウッド黎明期のスタントマンであるロイが、サイレント時代の活劇映画要素を組み合わせて即興で語る、ある意味わかりやすく陳腐な物語でもあります。

少女は物語に引き込まれ夢中となり、時には物語に干渉もします。

青年も少女も厳しい現実や運命にさらされています。青年は自身の運命を悲観する一方、無邪気に見える少女もまた悲惨な境遇にあることが仄めかされます。楽しみを与えられることがあまりなかったであろう少女は、それだからこそ、ロイが語るありふれた、でもおとぎ話じみた物語に夢中になるのです。

観客は、二人のこれからの運命に悲劇的な予感を覚え、物語が永遠に続けばよいと願います。そうすれば二人とも不幸にならずに済むから、と。

しかし、物語が現実に干渉し始めます。青年は自らの願望のために物語を利用し、少女は物語のために不幸な目にあってしまうのです。その少女の不幸は青年の運命を変え、物語の結末も変えてしまいます。

人類は、思うようには生きられない人生のために、たくさんの物語を生み出してきました。この映画のラストはそう思わせてくれる救いがあります。そして、物語を必要とする人生の悲哀と喜びを感じることもできるのです。

❓ 邦題「落下の王国」は不適切だった?原題が示す真意

この映画が初回公開当時、あまり評価をされていなかったのは事実です。一部の人だけが知るカルト映画扱いとなってしまいました。

日本に関しては「落下の王国」という邦題がよくなかったのではないでしょうか?

当時は「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリー・ポッター」のようなファンタジー系の娯楽映画が大人気でした。そうした映画を期待して観た人たちにとっては、本作は意味不明な作品だったのかもしれません。

原題は「THE FALL」で直訳すればシンプルに**「落下」**です。本来なら「落下の物語」とでもするべきだったと思いますが、それでもヒットは難しかったでしょう。

結局、こうして時を経てヒットしたのは時代が変わったからなのだと思います。CGではないロケによる映像美が、今ではかえって新鮮に感じられることもあるでしょう。

そして、公開当時よりも現在のほうが必要とされる物語なのかもしれません。

なぜなら「落下」は、人間にとって本能的に恐れを抱かせるものだからです。

この作品に何を求めるにせよ、**映画館で鑑賞してください。**この機会を逃すと、二度とないかもしれませんから!

最新の上映情報や劇場リストについては、**映画『落下の王国 4Kデジタルリマスター』公式サイト**をご確認ください。

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